「県外に行っていたなら出社するな」。今回は、突然上司からこんな指示を受けたという男性からのご相談です。
今回の上司からの指示。
●法的に問題ないのでしょうか。
●休んだ日の分の給与は支払われるのでしょうか。
「県外に行っていたなら出社するな」上司の指示に困惑
男性は、子どもの部活動の送迎のため、県外へ行きました。会場では、子供を送り出し、本人はそのまま車中で待機していたそうです。
しかし、上司から出勤前に電話があり「県外に行っていたのか、それなら出社するな。2、3日休め。どうしてもやらなければダメな仕事は代わりにしておくので後で連絡してくれ」と言われました。
会社に、県外に行く際は事前に報告するといった決まりはありません。男性は仕方なく会社を休みましたが、「会社を休んだために業務が溜まってしまい、通常業務に戻るのも時間がかかりました」と疑問に感じています。
上司の指示は法的に問題ない
まず、「県外に行っていたなら出社するな」という上司の指示は、法的に問題はないと考えます。
労働者は、原則として、会社の業務命令に従わなくてはなりません。そして、会社の業務命令は、上司の指示という形で具体化されますので、労働者は、上司の指示に従わなくてはなりません。
もっとも、この上司の指示が、不当な動機や目的に基づいてなされたならば、権利の濫用にあたり、無効になり、上司の指示に従わなくてもよくなります。
今回のケースの場合、上司は、県外でのコロナ感染を心配して、出社を拒否したと考えられます。
出社するなという上司の指示について、不当な動機や目的はなく有効になると考えられ、上司の指示に従わなければならないことになります。
逆に、この上司の指示に従わなかった場合、上司の指示に従わないという、就業規則の懲戒事由に該当して、懲戒処分をされるリスクがありますので、上司の指示に従うのが無難です。
休んだ日の給料の全額を請求することができるのか
このような場合、給料はどうなるのでしょうか?
出社するなという上司の指示に従って休んだ日について、給料は全額支払われます。
相談者の方は、働こうとしたのに、会社側の都合で、働くことを拒絶されたのであり、このような場合には、会社に対して、休んだ日の給料の全額を請求することができるのです。
上司の出社するなという指示は、理不尽に思えるかもしれませんが、指示に従った上で、休んだ日の給料を支払ってもらうのがいいと考えます。
●原則として、労働者は会社の業務命令に従わなければならない。
●不当な動機や目的に基づくものは、権利の乱用になり、無効になる。
●上司の指示に従って休んだ場合、給料の全額を請求することが可能。