工具所持の男性に「深夜5時間」の取り調べ、都に賠償命令

刑事事件

今回のケースは、警察に違法な取り調べをされたとして、訴訟を起こした男性のケースです。

警視庁の警察官に違法な取り調べ・身体拘束をされたことで、精神的な苦痛を受けたとして、東京都内の工事業者が、国家賠償法に基づき、都に慰謝料などをもとめた訴訟を起こしました。

夜間の路上で職務質問をされた

工具


判決などによると、原告の工事業者は、夜間、都内の路上で作業車を停めていたところ、警察官に職務質問をされました。その際、車内から工具(ツールナイフやタクティカルペンなど)が見つかったことから、携帯の理由を聞かれたうえで警察署に任意同行しました。


その後、工事業者は、正当な理由もなく工具を携帯していたとして、取り調べを受けて、鑑識資料の作成や、車内の写真撮影などの捜査をされました。警察署での捜査が終わって、自宅前に戻ったのは、翌午前5時ごろのことだったそうです。同年翌々月、嫌疑不十分で不起訴処分となりました。

工事業者は東京都を相手取り、慰謝料等計330万円を求めて提訴した

裁判

工事業者側は、工具は工事業者として所持していたのであり、(1)職務質問は違法で、実質強制力を伴う任意同行だった、(2)取り調べは、深夜に長時間にわたり、限度を超えていた、(3)承諾してないのにポケットに手を入れたり、服の上から肛門や男性器を執拗に触るなどの所持品検査をされた――などと主張していました。

東京地裁は原告の請求を一部認めて、計22万円の支払いを命じた

判決

裁判長は、職務質問や任意同行について「違法」とは言えず、承諾のない所持品検査も「考えがたい」としたものの、深夜にわたって5時間の取り調べを実施したことについては、「合理的な理由は見出しがたく、社会通念上許容される限度を超えたものに至っていた」として、違法だと判断しました。

この日の判決を受けて、工事業者は、「賠償額は(請求よりも)少ないものの、国賠訴訟で一部でも認められたことはうれしい」と話しました。工事業者の代理人によると、控訴など、今後については未定で、判決内容を検討しているとしています。

●職務質問や任意同行については、“任意である”という観点から、拒否しても問題はない
警察官による違法な検査や取り締まりでお困りの場合は、弁護士等に相談することが望ましい

 

弁護士をミカタに