ひきこもり「無理やり連行」業者に賠償命令

家庭問題

昨今問題になっている、「ひきこもり」問題。
引きこもっている子供の自立を促すため、業者を頼る親も増えています。
しかし、そういった業者や団体には、当人の人格や人権を無視し、無理やり施設などに閉じ込める等、問題になるケースも増加しています。

ひきこもりの男性を無理やり連行

慰謝料

「ひきこもりの人を自立させる」などとうたう「支援」業者によって暴力的に自宅から連れ出され、事実上の監禁状態に置かれたとして、元入所者の男性(30代)が550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月25日、東京地裁で言い渡されました。
同地裁は、男性を無理やり施設へ連行し、監視付きの部屋に閉じ込めたのは不法行為に当たるとして、施設を運営者に慰謝料など計110万円の賠償を命じました。
 ひきこもり当事者らを無理やり施設へ連れていく業者は「引き出し屋」などと呼ばれ、類似の団体による連れ出しが全国で起きています。
弁護団は判決後、さらなる被害者を出さないよう、国が支援業者に規制を設けるべきだと訴えました。

突然自宅を訪れ、入所を迫った

閉鎖病棟

原告男性によると、施設を運営する職員らは、突然自宅を訪れて男性に入所を迫りました。
男性が同意せずにいると、職員2人に力づくで、車に引きずり込まれ、同センターの寮である地下の部屋へ連れて行かれて監視付きで8日間、閉じ込められたとのことです。

 それでも入所に応じずにいたところ、精神病院の閉鎖病棟で3日間身体拘束を受け、約50日間にわたり入院させられました。
男性は退院後、同センターでの生活を強いられたが、同年8月に弁護士らを頼り脱走しました。

原告の男性は、「施設では所持品を取り上げられ、職員には『稼ぎのないお前が悪い』と言われ続けました。
隙を見て入所者仲間と相談機関を回ったが、誰にも信じてもらえず(担当者に)『悪いのはあなたじゃないか』と言われたことさえある」と振り返ります。
閉鎖病棟では、オムツをはかされてトイレに行くことすら許されないという、屈辱的な経験もしたといいます。

本人の同意なしに連れ去るのは、違法

違法

判決では、同センターの職員らが男性を無理やり連れ出し、地下室に閉じ込めて「万が一逃走しても、捜索願を出して見つけてセンターに戻されることになる」などと話して逃げられない状態にしたことを「移動の自由を侵害する不法行為」と認めました。

弁護士は「たとえ(施設と契約した)親の了承を得ていても、本人の同意なく連れ去ったり閉じ込めたりするのは重大な人権侵害であり許されないと、明確にした判決。業者に警鐘を鳴らす効果が期待できる」と評価しました。

ただ、判決は原告男性が退院後、同センターの職員に財布や時計などを取り上げられ、監禁状態に置かれたとの訴えについては、原告に逃げられないと思わせる面はあったとしながらも「自由に外出できる時間もあり、逃亡は可能だった」などとして退けた。

   

●親の了承を得ていても、本人の同意のない連れ去りや閉じ込めは、人権侵害にあたる
●「引きこもりを支援する」と謳う悪徳業者が増えている。しっかりと見極めを!

 

弁護士をミカタに