子どものいる人と結婚し、その後に離婚した場合、その子とは法的な関係はどうなるのでしょうか。「モラハラ夫の連れ子と共に家を出たい」と考えている女性からの切実な相談が寄せられました。
夫の連れ子である娘は現在13才です。結婚当初は相談者と養子縁組をする予定でしたが、夫がそれを拒否しました。そこで「普段から暴言や暴力を振るう夫と離婚し、娘と共に実家で暮らしたい」と考えています。
娘との仲は良好で、父親と離れて相談者と暮らしたいと話しているそうです。離婚しても相談者は親権を持てるのでしょうか。
「養子縁組をしていなければ親権の主張はできない」
現状、相談者は養子縁組をしていません。この場合、離婚したら親権や監護権を主張することはできないのでしょうか。
娘さんのことが心配だと思いますが、離婚前に養子縁組をしていなければ、親権や監護権を主張することはできません。親子関係にないからです。
養子縁組をすれば、離婚後も親権を得ることは法律上、可能です。ただし養子縁組は離婚が成立する前にしなければいけません。
養子縁組には夫の承諾が必要
養子縁組をする時点で父親が反対しても、娘が望めば相談者と養子縁組することは可能なのでしょうか。
養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができるとされているので、13歳の夫の娘と縁組をする場合は、親権者である夫が娘の代わりに承諾をすれば養子縁組をすることができます。
結婚当初、夫が相談者と娘との養子縁組に反対し、現在、離婚も考えるような状態でしたら、現段階で夫が養子縁組を承諾することは考えにくいと思います。
養子縁組をする時点で15歳以上であれば、本人の意思で養子縁組をすることができますが、離婚前に養子縁組をする場合は、配偶者の同意が必要なので、結局、父の同意が必要になります(民法796条)。
この場合にもし仮に夫が同意して養子縁組をした場合には、夫が離縁を求めることはできませんので、離婚の際には親権を争うことになるでしょう。
離婚後に養子縁組することは難しいのでしょうか。
娘が15歳になってから離婚をして、その後娘と養子縁組をする場合は、家庭裁判所の許可が必要になります(民法798条)。養子縁組が娘の福祉に資するかという観点から許可されるかどうか判断されます。
未成年の娘を養子にして引き取るというのは相当の覚悟が必要かと思います。
●相手の連れ子であっても、離婚前に養子縁組をしていれば親権を得ることは可能
●本人が15歳未満の場合、法定代理人が縁組の承諾をすることになる
●本人が15歳を超えている場合は、本人の意思で縁組をすることが可能
●離婚前に養子縁組をする場合、配偶者の同意が必要
●離婚後は、家庭裁判所の許可が必要