スキー場で子どもが転倒、ぶつかったら誰の責任?

事故

東京の大学生が新潟県内のスキー場に行った時のこと。そのスキー場は、スノーボードが滑走禁止など、子ども向けのコースを充実させているスキー場だったためか、親に連れられたかなり幼い子もきていました。

「もちろん上級者向けのコースは急斜面ですし、非圧雪エリア(雪が固められていない凸凹なエリア)も含まれているため、慣れている人でないと危険です」(ケンタさん)

この日の天候は、曇り。山頂は吹雪いており、上級者コースも見晴らしが悪いコンディションでした。

ところが、ケンタさんがリフトに乗っている時に下を見ると、親に連れられていた幼稚園か小学校低学年と見られる幼い子どもたちがプルークボーゲン(スキー板を「ハ」の形にして滑走する比較的平易な滑走方法)で上級者コースに挑戦していたのです。


「案の定転んだり、スキー板が外れたりしていて、上から『危ない!』と叫んでしまいました。視界が悪く、ゴーグル越しに見た限りでは小さい子がいるかどうかはわかりそうにありません。これでは危険だと判断し、上級者コースへ行かないことにしました」(同)

ケンタさんは「無謀な挑戦をした小さな子どもに気付けなかった場合でも、上から滑ってきた側が悪いとして、過失は10:0になってしまうのでしょうか」と質問を寄せました。

裁判例では「上方を滑走する人に高度の注意義務を課す」

注意義務

スキー場での衝突事故で裁判になった場合、裁判所はどのように判断するのでしょうか。
スキー場での事故をめぐっては、裁判例も多くあります。

その1つ、さいたま地裁熊谷支部平成30年2月5日判決は、「スキー場において上方を滑走する者は、下方を滑走する者の動静を注視することができるが、下方を滑走する者は、通常、上方の状況を確認することは困難であるから、上方を滑走する者に衝突事故の発生を防止すべき高度の注意義務が課せられるというべきである。」としています。

また多くの裁判例では上方を滑走する人に高度の注意義務を課し、下方を滑走する人には過失を認めない傾向にあります。

下方の過失を認められる可能性も…

過失

今回の事例のように、下方を滑っていた側に問題があったケースでも同様の判断となるのでしょうか。

その場合には、下方にいた人の過失が認められるかもしれません。

例えば、上方から下方を見通しにくい場合に下方にいた人が転倒してすぐに脇に退避等しなかったり、下方の人がコースにそぐわない滑走をしていたりした場合には、下方にいた人に3割程度の過失が認められる可能性があります。

ご質問のケースも、上方からの視界が悪い日だったとのことです。下方の子どもが転倒したまま退避もしなかった、あるいはコースにそぐわない滑走方法をとっていたような場合には、子どもの側にも過失が認められる可能性があります。

スキー場に連れて行く親の注意点は?

賠償責任

万一、衝突した場合、親の責任が問われることになるのでしょうか。親はスキー場でどのような責任を負うのでしょうか

子どもの責任能力がない場合は監督義務者の責任(民法714条)を、責任能力がある場合でも監督義務違反の責任(民法709条)を問われることがあります。子どもの責任能力は一般的に11~14歳前後から認められるとされています。

いずれに該当する場合でも、明らかにスキルに合わないゲレンデで子どもが滑るのを放置していたようなときには、子どもが与えた損害について親が賠償責任を負う可能性があります。

スキー場では脊椎骨折も含む重大な障害につながる事故が発生する可能性があります。お子様が加害者・被害者にならないよう、実力にあったコース選択や着帽等の安全対策を怠らないようにしましょう。

  

●スキー場での事故の場合、多くは上方で滑走する人に注意義務がある
●下方を滑る人に過失があった場合、そちらにも過失が認められる可能性がある
●子供が事故を起こしてしまった場合、監督義務者として親が賠償責任を負う可能性がある

  

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